社員に対して行う減給処分については、労働基準法(第91条)により上限が定められています。これによると、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。」とされています。
そのため、例えば、ある社員の平均賃金日額が10,000円であれば、1事案につき5,000円を超える減給を行うことや、1賃金支払期に減給処分の対象となる行為を7回行い、それぞれについて5,000円ずつを減給した結果、その合計額(35,000円)が1賃金支払期における賃金の10分の1を超える場合も違反となります。
また、企業が懲戒処分を行う場合には、刑法の一般原則である「一事不再理の原則」が適用されるという考え方があります。
「一事不再理の原則」とは、同一の犯罪に対して重ねて刑事上の責任を問うことはできないというもので、懲戒処分についていえば、同一の懲戒事案に対して二重に懲戒処分を課せないことになります。
したがって、ご質問の内容は、1事案における減給制裁の上限を超え、かつ、1事案に対して二重に懲戒処分を課すこととなるため、不可能となります。
なお、結果として継続的な減給になる制裁として「降格」がありますが、降格については、労働基準法上には何ら規定がありません。降格・降職など職務変化に伴う賃金の低下は、減給の制裁に該当しないとされています。
ただし、社員にとっては相当厳しい制裁となるため、それ相当の秩序違反行為があった場合に限られるべきでしょう。