通勤手当は、会社が通勤行為に要する経費(実費)を負担する目的で、当該実費を限度に支給が行われるもので、仮に実費を超える請求があった場合は、会社は超える部分の支払いを拒否することができます。
もし、社員が悪意や故意、過失により、実費を超える額の通勤手当をすでに受領してしまった場合には、その受領した額のうち、実費を超える額は民法上の「不当利得」に該当します。
民法第703条では不当利得を返還する義務を定めていますので、社員が通勤経路や通勤方法について虚偽の届出を行い、あるいは、異なる経路・方法を利用するにもかかわらず、会社に報告することを忘れていた場合には、会社は給与規程等に基づいて支払い義務のある額を超えて支払った額について、不当利得として返還を請求できます。
なお、返還請求は会社の有する債権(不当利得に係る債権は一般債権)ですから、その返還請求権の時効は10年間となりますので、過去3年間にわたり通勤手当を不正に受給したということですから、過払い額の全額を請求することが可能です。ただし、過払いとなった理由に会社の過失(人事や総務部署のミスなど)が認められる場合は、会社の過払い分はすでに支払った額から減額されることになります。